浅窓の平常

To the happy (or unhappy) few

友がみなわれよりえらく見ゆる日よ

◆とはいっても、啄木のように妻がいるわけではない。むしろそういう存在がいないので、えらく見えるというべきか。有り体に言うと、友人は皆結婚しているか、彼女が居る。それはそういうものだろう。で、自分にはいない。それもそういうものだろう。モテない。これはそれなりに贅沢な苦悩で、というのも少し前までは精神的健康であったり金銭であったり、そういう方向性の苦悩が主で、それに比べると実際木端のようなものである。精神的に不安定な時期をやり過ごし、うまいこと正社員に雇ってもらって、なんとなく続いてお金も少しずつたまってきて、少し余裕が出てきたところで、そういえば俺は恋愛経験ゼロだったな、と気づいたようなところがある。人生の実績としていつか解除できればいいなという思いはあるが、今のままではおぼつかない。

◆何年ぶりかに中学の同級生と会ってきたが、夕暮れどきの日差しがセピア色で、自分はタイムスリップしてしまったのではないかと本気で不安になった。スマホを見ると知っている日付と時刻で安心した。頬をつねっても仕方がない。頬より遥かに長い時間スマホを触っている。頬よりも身体であるといってよい。