浅窓の平常

To the happy (or unhappy) few

断片020

◆俺はゲラなんでどうでもいいことで割と笑ってしまう。弟も俺に似てゲラで、スマホ見ながらしょっちゅう爆笑してる。笑うのはいいが、なぜ笑っているのかがわからないのは気持ち悪いというか、不愉快なものがある。寮に居た頃、スマホ2chまとめとか見て声出して笑うと、そのたびに同部屋の後輩がなに見て笑っているのかを問いただしてきた。そして俺が2chのおもしろページを見せると、きまって「そこまで爆笑するほどではない」と言うのだった。今なら後輩の気持ちもわからなくはない。申し訳ないことをしてしまったと思う。


◆思い出しついでだが、その後輩は入寮してすぐの頃、坂口安吾が好きと言っていた。一応堕落論くらいは読んでいたけど、正直その頃はちんぷんかんぷんだったな。なまじ内容だけは知っているものだから、なんか思いつきで適当なことを言った記憶があり、今思うと恥ずかしい。少し前堕落論を読み返したのだけれど、すごい、何を言っているかめちゃくちゃわかる。『人間は可憐であり脆弱であり、それ故愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる』。寮に居た頃は堕落する最中だったから、わからなかったのかもしれない。あの頃はあらゆるものが無意味に思え、昼夜逆転に陥り、大学もろくに行かず、ネットばかりしていた。安吾の言う堕落は、消極的ニヒリズムに襲われ、無力感に身を委ねている状態、と言い換えるとわかりやすくなる*1。その頃はその無力感が全てだったので、理解できなかったが、今ならわかる。たしかに俺は、堕ちぬくことはできなかった。少し前からバイトも始めたし、プログラミングの勉強も始めた。研究職、あるいはプログラマでもいいが、裁量があり、論理の世界に没入できるような仕事をしたいという、将来の目標のようなものもできた。数年前の自分からすれば考えられないが、生きる意義のようなものを拵えてしまった。とりあえず今はこの目標に向かって進んでいきたい。また堕ちる日まで。

*1:少なくとも俺にとっては