浅窓の平常

To the happy (or unhappy) few

音楽について

 最近、音楽を聴くことに、今まで以上に面白みを感じるようになってきた。音楽という媒体には、「いま、この瞬間」に浸りきることができる、という強さがある。現在という瞬間には、音しか存在していない。自分すら消えてしまうような、そんな感覚。

 もちろん、漫画や小説などでも、熱中して我を忘れるようなことはある。でも、それは音楽での感覚とはまた別種のものだ。何がその違いを生み出すのだろうと考えてみたときに、マンガや小説には、物語が存在するという事実に思い当たった。物語は、基本的に未来志向である。ページを捲るという行為は、続きが気になるという衝動によってなされる。そこには未来への期待しか存在しない。だからかは分からないが、漫画や小説だと、現在という瞬間は、来るべき未来への生け贄という感覚がある。これは、「いま、この瞬間」に浸る感覚とは対照的だ。

 音楽にももちろんそのような部分はあるのだけれど*1、現在志向が強い媒体であると思う。単純に、未来志向に飽きてきた、というのもある。未来への期待にどこか乗っかりきれない自分がいるのだ。

*1:サビ前には決まって、サビが来ることを匂わせるフレーズが入るけれど、これは未来志向的といえるかもしれない